私が、この本を手に取ったのは、その美しい装丁がきっかけだった。色鮮やかで今にも動きだしそうな躍動感を持った犬のその姿は、一度みたら忘れることができない。
もともと、その本を買うつもりはなかったのだが、ついつい手に取って購入してしまっていた。
この話のあらすじを簡単に紹介する。
昼間でも一人で外を歩くことができないほどの治安の悪い国に暮らすこととなったまどか。そこで、家を守るガードドックと呼ばれる犬を飼うことになる。まどか自ら選んだ虎毛の子犬に「虎」と名付け、まどかとともに成長していく。
この本を読んで強烈な印象を受けたのは、ガードドックという存在だった。日本社会で犬といえば、愛玩動物としての犬の姿を思い浮かべる。人に対して従順で、甘えてくるあの愛らしい姿。
しかし、この本では愛玩動物としてでの犬ではない姿が描写される。
私は、その姿がとても印象に残った。日本社会で生きていくなかで見ることがない姿。日本でも番犬にとして犬を飼うというのは話として聞いたことがあったが、ここで出てくる姿はそのような生易しい姿ではなく、完全武装した兵士のような姿があった。
まどかがそんな犬に対して抱く感情は、現代の日本社会に生きる私たちにとって、決して体験することができないものだった。
日本社会は、ほかの国と比べて豊かで安全であることは、よく聞く話であり事実である。そんな社会で生きる私たちだからこそ、この小説を読むことで愛玩動物としての犬の姿から見知らぬ土地の様子を生々しく体験することができる